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『フェア・ゲーム/All's Fair(1)』ジョシュ・ラニヨン:頑固でプライドが高い男が1冊かけて元鞘に戻るのをモダモダしながら眺める

フェア・ゲーム (モノクローム・ロマンス文庫)

 

ジョシュ・ラニヨンさんのM/Mロマンスミステリーシリーズ、『アドリアン・イングリッシュ』と『殺しのアート』に続き、『All's Fair』を読了しました。

 

正直なところ、シリーズ3つ目だし、毎回ダークヘア細身の主人公とガチムチな男のお話なので、似たような話になるのかしら?と疑いつつ読んだんですが、いやいや、ラニヨンさん流石です。
主人公カップルの性格も違えば、シチュエーションも違うし、抱えている問題も全く違うので、飽きることなく全3冊一気に読み終わりました。

 

さっそく感想を書いていきますが、盛大にネタバレしていますのでご了承の上お進みください。
ただし、2・3巻の内容には触れませんのでご安心を。

 

※日本語訳部分は私の意訳ですので間違いがあったら教えてくださいね。

 

All's Fair シリーズ

3冊で完結しているお話です。今回はその1冊目。

  原書 日本語翻訳版 ジーナ
1 Fair Game フェア・ゲーム 感想
2 Fair Play フェア・プレイ  
3 Fair Chance    

日本語翻訳版は2019年2月の時点で2冊目まで発売されており、3冊目は今年の年末刊行とのことです、楽しみですね。

 

 

あらすじ

元FBI特別捜査官で現在は大学で歴史を教えるエリオットの元に、失踪した学生の捜索依頼が持ち込まれた。 捜査協力にあたる担当捜査官を前にしたエリオットは動揺を隠せなかった。 そこには一番会いたくない、けれど決して忘れられない男、タッカーの姿があった。 タッカーはかつてのエリオットの同僚で恋人。 17ヵ月前、膝を砕かれ失意の底に沈んでいたエリオットに、冷たく背を向けた男。シアトルの大学を舞台に繰り広げられる、甘く激しい男たちのミステリー・ロマンス。 

Source : フェア・ゲーム (モノクローム・ロマンス文庫)

 

 

カップリング

エリオット・ミルズ

37歳。
PSUで歴史を教える大学教授。
元FBI特別捜査官で、17ヵ月前に膝に被弾し退職。
その際、当時同僚で恋人関係だったタッカーとも別れている。
ダークヘア、細身、グレーの瞳。
愛車は Silver Nissan 350Z。
料理好き。

 

エリオットと彼のお父さんが教えるアメリカ西海岸で一番リベラルな大学PSU(Puget Sound University)。ググってみたら、Tacoma に実在する大学っぽい?

 

グースアイランドというTacoma付近にあるという設定の架空の島に住んでいて、毎日フェリーで出勤している。
この島、アンダーソンアイランドという実在する島がモデルなんだとか。ぜひ行ってみたい。

 

 

タッカー・ランス

FBI捜査官。
エリオットの元同僚で元恋人。
長身、ガチムチ、赤毛、青い瞳、顔にそばかす。
愛車は Blue Nissan Xterra。

 

 

みどころ

モダモダ感を存分に味わって頂きたい

端的に言うと、17ヶ月前に分かれた恋人に未練があり、どう読んでも、どう逆さまにして読んでも、タッカーのことが大好きなのに、それを認められず、1冊通してずっと違う違うと自分に言い聞かせながら素直になれない男が、最終チャプターでようやく元鞘に戻るお話。

 

エリオットの素直じゃないっぷりには、少しイラつきすら感じるほど。
これ1冊も尺いるの?と疑問に思うくらい、周りからみると彼らがどうしようもなく求め合ってるのは明白。
しかし、反発しあって全然進展していかない。
モダモダ感がすごい。

 

まぁ、そこがエリオットの可愛さでもあるんですが。

 

 

なんだこの繰り返し

私はKindleで本を読む時は、気に入った部分にハイライトを付けながら読むんですが、自分が付けたハイライト部分だけを後から一覧表示でき、感想ブログを書くにはとても便利なんです。

 

今回も自分のハイライト一覧をざーっと流して見ていたんですが、リスト化してみると、もう何度も何度もエリオットが同じようなセリフを言っていまして。
思わず「いいかげんにしろよ!」と、突っ込みたくなってしまいました。

 

タッカーと接触

心臓が跳ねる

それは気のせいとか何とか自分に言い聞かせる

喧嘩する

家に帰って一人でタッカーを思い出す、寂しくなる、または夢に見る

俺たちは恋人じゃなかったとか何とか自分に言い聞かせる

最初へ戻る

 

だいたいこの繰り返し。

 

どちらかが少しでも違えば、またストーリーは違ってくるんですけどね。
例えば、もっとタッカーの押しが強かったら、とか。

 

エリオットの性格とか気にしないで、もっと強引に踏み込んで自分のペースで恋愛を運ぶくらいの勢いがある人なら、まだよかったんですけど。
なんだか妙にエリオットに気を使っているというか、押しが弱いというか、包容力が足りないというか。
結局、似た者同士なのかな。

 

 

癖のない男タッカー

今まで読んだジョシュ・ラニヨンさんのガチムチ攻たち(『アドリアン・イングリッシュ』シリーズのジェイク・リオーダンと、『殺しのアート』シリーズのサム・ケネディ)は癖が非常に強く、彼ら自身がシリーズを通して解決しなければならない問題でした。

 

それに比べると、タッカーってそれほど大きな問題点がないですよね。
上で挙げたように、エリオットと同じレベルで争ってしまい、包容力の足りなさはあるんですが、まぁ、それはどちらかと言うとエリオットの問題ですし。

 

あらすじだけ読んだ時は、「足にも心にも傷を負った恋人を捨てるなんて、なんて酷い男なんだ!」と思っていたんですが、物語を読み進めていくと、「あれ?タッカー全然いいやつじゃない?」に変わって行きました。

 

むしろ癖が少ない分、キャラクターも弱く感じてしまったのが正直なところ。

 

 

エリオットの性的な嗜好

彼らは海外M/Mロマンス小説だと割とレアな、受け攻め固定のカップルです。
というのも、エリオットが自分より大きくて強い相手に支配されたい願望を持っているから。

 

本の中でもタッカーに「コントロールフリーク」と言われるシーンがありましたよね。戦争ゲームのフィギュアが好きなのもその影響だ、と。


何事も自分でコントロールしたいタイプの人間だからこそ、ベッドの中でくらいコントロールを失って解き放たれたいんですね、きっと。

 

私自身が同じような願望を持っているので、「分かる!分かるよエリオット!」と、読みながら共感の嵐でした。


 

好きなシーンをひたすら語る

SEX以外の共通点がない、恋人とも呼べなかった2人の関係

An awful lot of memories for a relationship that hadn’t lasted a year. Hadn’t lasted three months, to be accurate. In fact, calling it a “relationship” was kind of an exaggeration.

(彼らの交際期間は1年もなかった。正確に言うと3ヶ月もなかった。事実、交際というのも言い過ぎなくらいだ。)

 

The only thing they ever had in common was the job. And a mutually weird sense of humor. And a love of Nissan cars and pizza. And the sex.

(共通点は、仕事と、笑いのセンスと、日産の車とピザ。あとはSEX。)

 

エリオットの恋人関係じゃなかった発言は度々出てくるので、全部は載せませんが。

 

ボーイフレンドではなく、恋人でもない。
共通点もないから友達でもなかった。
じゃぁなんだ?ファックバディなのか?
少なくとも17ヶ月間、エリオットはそう思い込もうとしていました。

 

どう聞いても別れたことに後悔してるんですが、恋人じゃなかったと自分に言い聞かせて納得する作業をしているエリオット。

 

まぁ、ただ理解もできるんですよね。
たったの11週間だけのデート期間では、職を失い、一生歩けないかもしれないという非常に重いシチュエーションを受け止めるほどの関係性は築けないですよね。
下手したら一生サポートすることに成りえた状況。
正式な恋人同士になっていなかったのなら、他に相手がいてもおかしくないですし。

 

彼らの話を読んで、今のパートナーと付き合って1年経った時に、もともと軽度の不安障害持ちだった彼にパニックアタックが起きて、正式なガールフレンドとして1年付き合った時点ですら、受け止めるのに戸惑い、別れるかどうか真剣に悩んだことを思い出しました。今となっては思い出だけど。

 

 

だから認めよう、素直になろう

Why did Elliot feel more depressed than he’d felt in months?

(何でこんなに落ち込むんだ、今まで落ち込んだ以上に)

 

Tucker had zero interest in him anymore. Fair enough, because it was the same way Elliot felt. Right?

(タッカーはもう俺に全く興味ない。それで結構、だって俺だって同じ気持ちだから。そうだろ?)

 

もう、こんなセリフばっかり。
読んでいて、いや、君、タッカーのこと大好きでしょう。
認めようよ、素直になろうよ、と何度エリオットに語りかけたくなったことか。

 

 

レインチェックでお願いします

“Um, could I buy you another drink, Elliot?” “How about a rain check?” “It rains a lot in Seattle.” “It does, yeah.”

(「もう一杯どう?エリオット。」「レインチェックでいいかな?」「シアトルは雨がよく降るからね。」「あぁ、そうだね。」)

 

生徒に言い寄られるエリオット。
フェダーの印象は悪くないし、男日照りだったけど、彼はPSUの生徒だし、容疑者候補だし、ということで断ります。

 

レインチェックって日常会話でよく使うんですが、がっかりしながらもフェダーの切り返しがいいですよね。

 

確かにシアトルはよく雨降るんですよ。
冬の6か月間はずっと曇りか雨でうんざり。

 

 

飲まずにはいられないタッカー

“How much have you had to drink tonight?” Tucker’s reply was unexpectedly cheerful. “A lot.” “Why’s that?” “Why do you think?”

(「今夜はどのくらい飲んだんだ?」タッカーの返事は予想外に陽気だった。「たくさん。」「どうしたんだ?」「お前はどうしてだと思う?」)

 

元恋人との再会に動揺しているは、エリオットだけではないと分かる瞬間。
…なんですが、エリオットは分かっていてはぐらかしているのか、全く感じ取っていないのか。



ラジャー、ヒューストン。良いフライトを。

“Okay. Thanks for staying on the line. You’ll be pleased to know I feel like an idiot.” “Try the engine.” “Now you’re just making fun of me.” “Well yeah, but try the engine anyway.” The engine purred into smooth life. “All systems go.” “Roger, Houston. Have a nice flight.”

(「分かった。電話を繋いでいてくれてありがとう。君は光栄にも、今俺が自分はバカだったと感じているってことを、知れたわけだ。」「エンジンをかけてみろ。」「更に俺をバカにしているのか?」「あぁ、いや、でも、とにかくエンジンをかけてみろ。」エンジンは正常に音を立てた。「全て正常だ。」「ラジャー、ヒューストン。良いフライトを。」)

 

このやり取りいいですよね。
こういう小洒落たセリフ回しが、私にとって海外の本や映画などでの楽しみの一つです。

 

 

1人でいることに孤独を感じる

Surrounded by glistening pine trees, enveloped by rain and fog, for the first time it occurred to Elliot that his extended period of solitude just might be turning into loneliness.

(雨に濡れて光る松の木に囲まれ、雨と霧に包まれていると、エリオットは初めて1人でいることに孤独を感じた。)

 

そう考えるといいタイミングだったんだろうな、お互いにとって、思った一文。
何か劇的なことが起きた後に、誰とも会いたくなくて1人になりたい時期って誰にでもあります。
その頃にタッカーと再会していたとしても、きっと喧嘩して終わったんじゃないかな、と。
17ヶ月という落ち着く期間があったからこそ、反発しつつも彼らは再び引かれ合い、求め合えるようになったのだと思います。

 

 

いきなりのキス

He turned his head and Tucker’s big hand landed ungracefully on his shoulder, drawing him back as his warm mouth landed on Elliot’s. For an astonished moment Elliot was aware of nothing but the feel of Tucker’s hard, insistent lips on his, the almost desperate pressure, the taste, the scent, the disturbing reality of Tucker’s desire.

(エリオットが振り向くと、タッカーの大きな手が乱暴に肩を掴み、引き寄せるのと同時に、その温かい唇で唇を塞がれた。驚いたことに、エリオットは何も知らなかったが、タッカーの力強い唇、その押し付け方はあまりに必死で、その味、その香り、タッカーの欲望が心を揺さぶられるほど真に迫っているのを感じた。)

 

タッカーの渇望ぶりにドキッとさせられたシーン。
ようやくここで、エリオットもタッカーの気持ちに気付くわけですが、結局、この後も喧嘩しちゃうんですよね、はぁ。

 

 

約2年前の出会い

No surprise that by the end of Tucker’s first week in Seattle, they’d landed in bed together.

(タッカーがシアトルにやってきて1週間が経過する頃には、一緒にベッドへとなだれ込んだのは、何の驚きもない。)

 

このあたりのエピソードも、ぜひ短編として読みたいですね。

 
 

ベッドの中でだけは素直

“What I want, really want, is to be fucked. I want you to fuck me.”

(俺が欲しいのは、本当に欲しいのは、犯されることだ。お前に犯されたいんだ。)

 

“Tucker…” Tucker’s thrusts punctuated his words. “I missed you so…fucking…much…”

(「タッカー…」タッカーの突き上げで言葉が途切れた。「会いたかった…」)

 

さっきまで喧嘩してたのに。
君が素直なのはベッドの中だけなんだなと、突っ込みを入れずにはいられないシーンでした。

 

が、この途切れ途切れなセリフには胸を締め付けられるものがあります。
意地っ張りなエリオットが唯一吐き出した本音。

 

個人的に、この「to be fucked」や「so…fucking…much…」が、どう日本語訳されたのかが気になるところ。


「to be fucked」は「犯される」だと何だか犯罪っぽいし、「ヤられる」だと逆にソフト過ぎるかな、とか。
「so…fucking…much…」の方も、ただ「会いたかった」のではなく、so fucking much 会いたかったんですが、それを「すごく」とか「くそ」等と訳してしまうと、なんだかエリオットの言葉っぽくないというか。

 

 

やっと甘い雰囲気に…!

“You’re crazy about me, Elliot. Why not admit it?” Elliot shook his head. “You’re nuts.” “Nah. You can’t kid a kidder.” He wrapped a muscular arm around Elliot and tugged him over. Elliot went with it, but he was still shaking his head over the sad state of Tucker’s sanity. Tucker’s mouth covered his. Elliot tasted the bite of the whisky as Tucker kissed him with those warm, almost tender lips. He closed his eyes, gave himself to the sweetness of the kiss.

(「お前は俺に惚れてるんだよ、エリオット。認めたらどうだ?」エリオットは首を振った。「冗談じゃない。」「あぁもう、いいかげんにしろよ。」タッカーは筋肉質な腕をエリオットに回し引き寄せた。エリオットは身を任せつつも、まだタッカーの認めたくない正論に首を振っていた。タッカーの唇がエリオットの唇を塞ぐ。エリオットはその温かく柔らかい唇のキスに、少しだけウィスキーの味を感じた。エリオットは目を閉じ、キスの甘さを味わった。)

 

He gave himself to the sweetness of the kiss.
好きなんだけど日本語訳しにくい最後の一文。

 

直訳すると「エリオットはキスの甘さに自分自身を与えた。」と謎の文が出来上がってしまうんだけど。
まぁ、つまりタッカーに与えられるだけのキスではなく、自分から舌を絡める等のアクションを起こして、彼とのキスをもっと甘いキスにした、みたいな、甘いキスに身を投じた、みたいな感じでしょうか。

 

何よりこの himself ってうのは頑固で素直じゃないエリオットなのがポイントですよね。

 

読者としては、「やっと…!やっと甘い雰囲気に…!」と胸をなでおろしたシーンです。

 

 

死んだら殺す

...his face bone white beneath the freckles and blue eyes wet and glittering with ferocious emotion. “If you even try to die, I’ll kill you myself,” Tucker had said in a choky voice.

(彼のそばかすの下の顔色は骨のように白く、青い瞳は激しい感情に潤み輝いていた。「もしお前が死のうとでもしようものなら、俺がお前を殺すからな!」タッカーが切迫した声で言った。)

 

タッカーみたいな大きい体の男が泣きながら、声を詰まらせながら「死んだら殺す」発言しているのは、とても可愛らしく感じてしまう。

 

そして、エリオットはようやくタッカーがどれほど自分を愛してくれているか、さすがに実感したんじゃないでしょうか。

 

 

余談

いつものことなんですが、ジョシュ・ラニヨンさんのミステリーでは、受けが事件解決へ向けて突っ込んで行き、危険な目に会いそうなのを、攻めが止めようとするも止めきれずに助けに行く、というパターンがおなじみです。

 

  • 『アドリアン・イングリッシュ』のアドリアンとジェイク
  • 『殺しのアート』のジェイソンとサム
  • 『All's Fair』のエリオットとタッカー

 

この3カップル、3人ずつ受け攻め別れて座談会したら楽しそうなのにと、ふと妄想してしまいました。 

 

受けのことが心配でしょうがない、という話で激しく共感しあうのか。
それとも、可愛くて可愛くてしょうがない、という自慢大会になるのか。

 

ただ、私のパートナーがよく言ってるんですが、男同士だと集まってもあまり恋人の話はしないそうなんですよね。女子会みたいに恋バナばかりしないよ、と言っていて。ほんとかな?

 

 

書籍紹介 

原書

Fair Game (All's Fair Book 1) (English Edition)

Fair Game (All's Fair Book 1) (English Edition)

 

日本語翻訳版

フェア・ゲーム (モノクローム・ロマンス文庫)

フェア・ゲーム (モノクローム・ロマンス文庫)